保健栄養学科の澤田和彦先生の論文が国際脳研究機構(IBRO)のオンラインジャーナルIBRO reportsに掲載されました

Follow-up study of subventricular zone progenitors with multiple rounds of cell division during sulcogyrogenesis in the ferret cerebral cortex
(自己複製能を有する脳室下帯神経前駆細胞の
追跡研究)

概 要

 発生過程の高等哺乳動物の大脳皮質において、脳室下帯外層(oSVZ)には自己複製能を有するbasal radial glia (bRG)が一時的に出現し、その後の皮質の急激な拡張においてニューロンの供給源となる。本学保健栄養学科の澤田和彦先生は、発生中のフェレット大脳皮質においてbRGの自己複製により生じた細胞を標識し、その後の分化と遊走先を明らかにしました。本研究は、国際脳研究機構(IBRO)のオンラインジャーナルIBRO Reports (電子版)に掲載されました。

研究の背景

 発生過程の高等哺乳動物の大脳皮質において一時的に出現する脳室下帯には自己複製能を有するbasal radial glia (bRG)1)が存在し、bRGはその後の皮質の急激な拡張においてニューロンの供給源となることが知られています。本研究では、フェレットを用いて発生中の大脳皮質の脳室下帯において自己複製能を有する細胞を標識し、標識細胞の分化と遊走先を調べました。

本研究における成果

 生後5日齢のフェレット仔(計5例)にEdU2)を投与し、その48時間後にBrdU3)を投与しました。このうち2例はBrdU投与2時間後に、3例は生後20日齢に灌流固定をし、脳を取り出しました。各大脳半球について100 μm凍結切片を作製し、神経幹細胞、ニューロンおよびグリア系細胞のマーカー抗体を用いて免疫染色4)を行いました。
 生後7日齢(BrdU投与2時間後)では、脳室下帯にEdU/BrdU二重標識細胞がみられ、その80%以上がPax65)陽性を呈し、二重標識細胞がbRGであることが示唆されました(図1)。生後20日齢では、すべてのEdU/BrdU二重標識細胞はNeuN6)陽性を呈し、ニューロンに分化していることが示唆され、更にその60%以上がparvalbumin7)陽性を示しました(図2)。クラスター解析からEdU/BrdU二重標識ニューロンは、進化の過程で拡張した大脳皮質の領域(evolutionary expansion)で特に高密度でみられることが分かりました。本研究では、大脳皮質の神経発生後期に自己複製したbRGの標識と追跡に成功し、bRG由来のニューロンはevolutionary expansionに関与することが明らかになりました。

今後の展望

 フェッレトは大脳に“皺(しわ)”(脳溝と脳回)をもつ小型の実験動物であるため、脳溝の形成に異常がみられる神経発達障害や精神疾患のモデル動物として注目されています。本研究では、evolutionary expansionに関連した皮質領域の拡張にbRGが関与することを明らかにしました。今後は、新生仔期に薬剤投与を投与し、脳溝形成異常を引き起こしたフェレットの大脳皮質でbRGを標識・追跡し、bRGの脳溝形成への関与を明らかにしたいと考えています。

保健栄養学科の澤田和彦先生の論文が国際脳研究機構(IBRO)のオンラインジャーナルIBRO reportsに掲載されました
図1.生後7日齢の脳室下帯の免疫蛍光多重染色。青-Pax6;シアン-Sox2:緑-EdU;赤-BrdU

oSVZ:脳室下帯外層
iSVZ:脳室下帯内層
VZ:脳室帯
保健栄養学科の澤田和彦先生の論文が国際脳研究機構(IBRO)のオンラインジャーナルIBRO reportsに掲載されました
図2.生後20日齢のの大脳皮質の免疫蛍光多重染色。青-NeuN;:緑-EdU;赤-BrdU

I:I層
OS:浅層(II-III層)
IS:深総(IV-VI層)

1) basal radial glia (bRG):近年発見された大脳皮質の神経幹細胞。

2) EdU:5-ethynyl-2´-deoxyuridine. DNAを構成する塩基であるチミジン(T)の類似物質。DNA合成の際にチミジンの代わりにEdUがDNAに取り込まれるため、増殖細胞の標識に使用される。

3) BrdU:5-bromo-2’-deoxyuridine. DNAを構成する塩基であるチミジン(T)の類似物質。DNA合成の際にチミジンの代わりにBrdUがDNAに取り込まれるため、増殖細胞の標識に使用される。

4) 免疫染色:抗原抗体反応を利用して、特定の抗原(タンパク質等の生体を構成する物質)を組織切片上で標識する手法。これにより特定の抗原が脳のどこにあるかを顕微鏡で観察することができる。

5) Pax6:動物の組織・器官の発生において中心的な役割を果たす遺伝子ファミリーに属する転写因子。大脳皮質の発生ではbRGで発現される。

6) NeuN: Neuronal Nuclear Antigen. ニューロンで特異的に発現されるタンパク質。

7) parvalbumin: カルシウム結合性の低分子量のアルブミンである。一部のニューロンで発現される。

論文情報

掲載雑誌 IBRO Reports 7巻 42-51頁
タイトル Follow-up study of subventricular zone progenitors with multiple rounds of cell division during sulcogyrogenesis in the ferret cerebral cortex
(自己複製能を有する脳室下帯神経前駆細胞の追跡研究)
著 者 Kazuhiko Sawada(澤田和彦)

研究グループ

 本研究は、本学・保健栄養学科の澤田和彦先生の個人研究として行われました。

研究助成

 本研究は、日本学術振興会科学研究助成金・基盤研究(C)「脳回形成における脳室下帯神経幹細胞の役割」(課題番号:15K08144)(研究代表者:澤田和彦)の助成を受け、実施されました。

本件に関する問い合わせ先

つくば国際大学 医療保健学部 保健栄養学科
教授 澤田和彦(サワダ カズヒコ)
〒300-0051 茨城県土浦市真鍋6-8-33
Tel:029-883-6032
E-mail:k-sawada@tius.ac.jp

つくば国際大学 ~Tiu-Style~