つくば国際大学には、学生一人ひとりの想いに応える先生がいます。それぞれの先生が、どのような想いをもって、
学生たちと向き合っているのか。担当している授業や先生の活動を紹介するとともに、
学生のみなさんへのメッセージをお届けします。
▼教員プロフィール
東京医科歯科大学 医学部 医学科 卒業。東京医科歯科大学大学院 医学研究科 博士課程 修了(医学博士)。
長年にわたって膠原病の診療に従事し、東京医科歯科大学大学院 教授を経て、2020年より現職。
臨床免疫学、とくに抗DNA抗体の性質、病態との関連
日本臨床免疫学会、日本内科学会、日本臨床検査学教育協議会
臨床免疫学、免疫検査学、公衆衛生学、病態解析演習、医学概論
私が担当している免疫学を学ぶ意義は、大きく二つあります。
一つは免疫学的な見地から、臨床検査の基礎である抗体検査、抗原検査を理解できること。二つめは、人体の免疫の仕組みを理解することで、病理学や病態学など他の科目への理解を深めることにもつながるということです。
つまり免疫学は、臨床検査技師をめざすうえでの基礎となる学びと言えるでしょう。
臨床免疫学、免疫検査学、公衆衛生学、病態解析演習、医学概論
私の研究についてご紹介します。
膠原病の一つである全身性エリテマトーデス(SLE)では、DNAと反応する抗体(抗DNA抗体)が産生されることが特徴で、血液中の抗DNA抗体の測定は、SLEの診断や治療効果の判定に欠かせない臨床検査項目の一つとなっています。しかし、抗DNA抗体がどのようにSLEの病態形成に関わっているかについては、まだ充分に解明されていません。
SLEは、20〜40歳代の女性に多く、当初は原因不明の発熱、皮膚症状、関節痛などで始まることが多いのですが、診断・治療が遅れると心膜炎、胸膜炎、腎炎などの内臓病変も現れてきます。一部の患者では精神症状、意識障害、痙攣などの中枢神経症状も加わってきます。特にこの精神・神経症状に関しては、患者の組織を入手することが困難なこともあって、研究が遅れています。
東京医科歯科大学の学生と一緒に、最近、脳の神経細胞の機能維持に重要な働きをしているアストロサイトという細胞をラットから分離し、抗DNA抗体と一緒に短時間培養してみました。図はアストロサイトの蛋白を緑、核のDNAを青、抗体を赤色の蛍光色素で染めたものですが、抗体が生きている細胞の核の中まで侵入してDNAと結合し、その結果、青と赤が重なって紫色に染まって見えました。このようなことがSLE患者の脳内で起こっていれば、細胞の機能が障害されて、中枢神経症状を引き起こす原因となる可能性が考えられます。
また、つくば国際大学臨床検査学科の学生と一緒に、抗DNA抗体が白血球におよぼす作用についても検討を始めました。
授業で習うこと、教科書に書いてあること、国家試験に出題されることなどは、何年も前に明らかにされたことばかりですが、学問はもっと先まで進んでいます。それでもまだ私たちの身体の仕組みや病気に関しては、解明されていないことがたくさんあります。
臨床検査も日進月歩。AIなどのICT技術が導入され機械化・自動化が進んでいますが、まだまだ人による判断が求められる場面が多くある、というのが現状です。単にマニュアルに書いてあることを暗記し、実行できるだけでなく、日頃から人体の仕組みに興味をもってよく観察し、よく考える姿勢を養い、応用力と判断力を身につけることが大切です。
つくば国際大学の臨床検査学科では、学生個人に合わせて学びを支援する体制を整えていますので、少しでも疑問を感じること、深掘りしたいと思うことがあったら、どんどん質問してみてください。その疑問や興味が、臨床検査技師として働く上での強みになると思います。
医歯薬出版の免疫検査学の筆頭編集者として、多くの学校が採用している教科書の編集・執筆に関わっています。